コットンハウス、フレンズの設立当初からの理事である可山優零さんが昨年上梓された『続・冥冥なる人間』(川島書店)について紹介させて頂きます。
30年前の事故で頸椎を受傷し全身麻痺という障害を負った可山さんは、前著に続いて、現代社会が失いつつある、または多くの人が失ってしまった「幸福を感じ取る力」を、魂の遍歴を通して思索を深め探求し、これを口述で書き綴っています。
可山さんの遍歴のターニングポイントは、リハビリを断念させられ、重度障害者施設に入所するしかなかった時にあったようです。可山さんは、差別・抑圧・虐待がまかり通り、糞尿の匂いに満ちた劣悪な環境であった施設で、同室者と共に考えました。「重度障害者施設の入所者は、人間としての生活の質を享受しながら生きなければならない。それは入所者のだけの為にではなく、健常者の為に、強者の為に、でもある。人間の未来の為に、未来の人間の為に、である」と。可山さんは、その考えを実践することを、何モノかが自身に与えた使命として考えました。
以来9年の歳月をかけたのち可山さんは、地域自立生活の道を歩き出しました。その遍歴の記録を是非読んでいただきたいのです。その遍歴とは、言わばただ当たり前の幸福に至ったというだけのものなのですが、可山さんが見せてくれたその当たり前の幸福というものが、現代社会においていかに稀なものになってしまったのかということを健常者(?)である私は思い知らされました。
そして、人間はどこへ行こうとしているのか、と深く考えさせられました。可山優零さんは、冒頭で下記のように述べています。
「土壌に撒かれた一粒の米は、適正な水や養分を得られれば、1500粒に増殖する。敬意を払う実践をする成熟した人間は、物を媒介とした人間関係ではなく、目には見えない温もりで繋がる人間関係を作っていく。彼らが多くなると増殖された『愛と優しさ』が社会に融和し、価値に新風が吹き込まれ、誰もが、最期まで、人間らしく生きていける人間尊重の価値観が創造されるのであろう」と。
可山優零著『続・冥冥なる人間』を購読ご希望の方は、
訪問看護ステーション風 042-319-1051 か、
川島書店 03-3365-0141 まで
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by土屋秀則(風&コットン)