2015年新年のご挨拶   土屋秀則

新年のご挨拶
                                             NPO法人コットンハウス、フレンズ理事長 土屋秀則

早いものですが、私がNPO法人コットンハウス、フレンズの理事長に就任させていただいてから今年で3年となります。
この間私共法人は、平成24年5月に『訪問看護ステーション風』を、そして昨年4月には『特定相談支援事業所つづれおり』と『グループホーム風媒花』を設立させていただきました。
おかげさまで、『風』も『つづれおり』も『風媒花』も、一歩一歩ですが地域医療福祉に貢献できるようになってきております。また、就労継続支援B型『コットンハウス』および『Cafeコットン畑』そして就労移行支援『フレンズファーム』においても、その支援は幾分か充実してきていると感じております。
更に来年には、私共『コットンハウス、フレンズ』は、運営を始めて20年の節目を迎えることが出来ます。
これまでの皆様の温かいお力添えに感謝を申し上げる次第です。

さて、これまでの私共の仕事を、年始の機を借りて振り返ってみますと、本当に心を尽くし力を尽くしてまいりましたがまだまだ不十分と言えることに気付かされます。
私共の仕事は、精神障がい者の方お一人おひとりを支援させていただくことです。これが原点であり、この個々の支援ということでは確かに進歩も成長もあったかと思います。しかし、精神障がい者支援全体で見ると、私たちの仕事はささやか過ぎると言わざるを得ません。
と申しますのも私は、私共に与えられている重要な使命の一つは、実は、現在今の今も社会的入院をせざる得ない方々がすぐにでも地域生活ができるようにしっかりとした支援の準備をしておくことだと思っているからです。
平成16年9月に厚生労働省が、「病院から地域へ」という標榜の元、精神障がい者の生きる場を変えよう、支援の場を変えようという指針を打ち出しましたが、未だ社会的入院を余儀なくされ病院での生活を送っておられる方が大勢います。その数は7万2千人と言われており、また、入院患者数は32万人です。
私共の仕事は少しずつ進展はしておりますが、まったく十分とは言えません。

昨年、トマ・ピケティというフランスの経済学者が書いた「21世紀の資本」という本が話題になりました。ピケティは資本主義を肯定しながらも、自由を経済行動の基本とする資本主義はそもそも格差を生み出す制度であることを広範なデータで証明し、平等性を維持するためには累進課税や相続税増税等の公的な仕組みが必要だということを結論づけているとのことです。
このことと精神障がい者支援制度とは直接の関係がないまでも、日本資本主義社会の一つの断面としてシンクロしているのではないかと、どうしても重ね合わせて考えてしまいます。
自由と平等という理念はあっても、放置しておけば資本主義社会には格差が深まります。「病院から地域へ」という厚生労働省の標榜はあっても、経済原理もあり、何か手立てを打たなければ社会的入院は減らないと考えます。また、このままでは何か病院と地域の支援の格差が再度広がるような気がします。
私共には、出来ることしかできないのですが、これからも心を尽くし力を尽くし、悩みながらも私共の仕事をして行こうと今年も感じ入っております。

先に申し上げたとおり来年には、私共コットンハウス、フレンズは設立20年を迎えます。理事はじめ職員、そして利用者さんも含めて本当にいいチームになろうとしています。それだからこそ、一人ひとりの利用者さんに対してのみならず、今も社会的入院を余儀なくされている方、また地域にあってもこれまで支援が届いていなかった方に対し、気概を持って仕事をしていくことをここに誓う次第です。
この際、私共は新たに当事者の活動とジョイントすることでこれまでになかった力を発揮できればとも考えております。

今後も、コットンハウス、フレンズの仲間とまた多くの地域の仲間と手を携えてこの仕事の道を歩まさせていただきたいと願っております。
皆様、是非これまで以上に私共へのお力添えをよろしくお願いしたします。

                                                             2015年新春快晴