2021年新春の挨拶

2021年新春のご挨拶                  2021年1月11日 NPO法人コットンハウス、フレンズ理事長  土屋 秀則

コロナ禍の中、正月はあっという間に過ぎました。
昨年中も私たちNPO法人コットンハウス、フレンズは、絞れるだけの知恵を振り絞ってコロナと戦ってきましたが、年末年始より爆発的に勢力を拡げつつあるこの強敵に対し、これまで以上に持てる力を出して戦っていかなければならない日々となっています。

新春の挨拶として私は本年、理事長としてというより訪問看護ステーション風の現場の一職員として、小さいかもしれませんが個人的な感動を皆様にお伝えし、それを挨拶とさせていただきたいと考えました。よろしくお願い致します。

訪問看護ステーション風では、6日間の正月休み、9名(延べ13名)の利用者さんに対し計画的に電話対応を行い、気持ちや生活面での安定を維持して頂けるよう配慮させていただきました。そして1名の方には、訪問を差し上げることで差し当たりの問題を回避することが出来ました。ただ、他の利用者さんには、おおよそ1回は訪問をお休みさせていただきました。
1月4日、正月休みに電話等の対応を差し上げていない利用者さんを訪問した際、「お正月はいかがでしたか」と訊ねてみました。
私は、利用者さんの正月はそれなりに大変ではなかったかと想像していましたが、利用者さんから返ってきた言葉はこうでした。
「自分は、自分の正月でよかったと思っています。自分は自由を与えられています。そして、こうして今日は土屋さんが来てくれます。こういったことは神様がしてくれているんだと思います」と。
神様とは幾分大げさに聞こえますが、私はこの言葉に、心の底から救われたような気持ちになり、また感動も覚えました。
私は、2年近く、この利用者さんが日々心穏やかに過ごせるようにと願いながら訪問を続けてきました。利用者さんがこの正月、心と生活の平穏のみならず、何か他のものまで得ていたように感じました。自然体で澄んだ気持ちで過ごせていたことに私は心から嬉しく思いました。

私たちは、利用者さんたちへ様々な面で支援を差し上げています。気分よく過ごしてもらうこと、生活に支障が起きないようにしてもらうことがその要点です。ところが利用者さんは、時に、自身の境遇を肯定的に捉えるという言葉では収まりきらない、何か心のやわらかい輝きといったものを見せてくれることがあります。1月4日は、そんなふうに感じました。
利用者さんの心に生じたささやかな喜びが、私の大きな喜びになります。

人の心は不思議です。人が幸せと感じるときには、経済的な要因だけではなく心が大きく関係しています。
私たちの利用者さんの86%の方は非課税世帯です。そして72%の方は生活保護世帯です。格差が進み、貧困は再生産されています。また、格差の進行と同時に人と人の間で心の分断も進んでいます。聞くも見るも無惨な社会になりました。
ところが、格差の進行の中あっても、また病気の中にあっても、小さな幸せを感じている人たちがいることに私は感動を覚えます。
格差をものともしない幸せ、この不思議な現象、不条理の裏返しのような現象を、どのように理解すればいいのか、私は考えてしまいます。

私たちNPO法人コットンハウス、フレンズの仕事は、本当にささやかなものです。しかし、本年も、利用者さんが目指す幸せを私たちも願い、心を尽くしてささやかな支援を続けさせていただきたいと思っています。